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最高裁判所第一小法廷 昭和48年(オ)860号 判決

主文

理由

上告代理人土井平一、同清水賀一の上告理由第二点について。

原判決によれば、原審は、その適法に確定した事実関係のもとにおいて、所論旧建物に関する増改築並びに賃貸借契約は、当事者の企図した契約の目的に鑑み、旧建物が取り毀された事実を前提として、その敷地上に新たに建築される本件建物の所有権の帰属とその賃貸借関係についての約定を内容とする契約に変更されたものとしていることが明らかであつて、原審の右判断は、首肯できないものではない。

ところで、民法五四八条一項所定の契約の目的物とは、解除の対象となる契約に基づく債務の履行として給付された物であつて、解除により解除者が相手方に返還しなければならないものをいうと解されるところ、右変更された本件契約の内容に照らすと、旧建物は本件契約の目的物にあたらないと認めるのが、相当である。そうすると、本件契約の解除の意思表示が有効であるとした原審の判断に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第一点について。

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認できないものではなく、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、独自の見解又は原審の認定にそわない事実を主張して、原判決を論難するにすぎないものであり、採用することができない。

(裁判長裁判官 岸 盛一 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光)

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